2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

俺はつけこむ男だぜ 4

なんだかんだ言いつつ、アイスを完食した私は、薬を飲んでベッドに横になった。 横になったのはいいのだが…… 「眠れねーのか」 そうなのだ。 睡眠はしっかり取ったし、少し体が楽になったせいか眠くならない。 葵がスタンドライトの明かりを少し強くして私の…

俺はつけこむ男だぜ 3

一回り大きい葵のパジャマに着替え、再びベッドに押し込まれた私は、体くらいは起こさせててくれと懇願し、背中にクッションを挟んでベッドの背もたれに体重を預けていた。 「明日は学校休んだ方がいいな」 再度計った体温は、先程とかわらず。 葵はベッドの…

俺はつけこむ男だぜ 2

「……ここは……?」 目を覚ましたら、見知らぬ天井が見えた。 そもそも電車の中で寝ていたはずなのに、あたたかい布団の中で目を覚ましているのは何故だろう? まず状況を確認しなきゃ、と体を起こしたら額から何かが落ちた。 それは、濡れたタオル。 こういう…

俺はつけこむ男だぜ 1(葵×千歳)

今日の私はついてない。 とにかく、朝から運が悪かった。 まず、起きて髪を整えてたら外が急に暗くなり、見事な土砂降りになった。 いささかウンザリしつつも、この間買ったばかりの傘を使えるからいいじゃないと自分に言い聞かせて大学へ向かえば、一限目は…

キスをしよう! 60

激しい雨に打たれ、髪も服も数秒でびしょ濡れになり、肌に貼り付いてくる。 前を見ず、溢れる涙を拭うように走っていると、強く腕を引かれる。 ものすごい雨で、私を捉えた人の言葉は聞こえないが、それでいいのだ。 このシーンに言葉は必要ないのだから。 …

キスをしよう! 59

お泊まり会から数日後、私たちは学内にある映研の部室にいた。 今から、最後の撮影に向かうのだ。 実は前回の撮影からはかなりの日数が空いた。 その理由は、部長のこだわり。 「よおし、皆! 準備はいいなっ!?」 「おーっ!!!」 部長の声に、全員が気勢…

月下美人は夢を見るか、更新

昔、たまたま見かけた月下美人をいまだに忘れられなくて書いたSSでしたー。 経緯は覚えてないのですが、玄関先でいい香りだなぁと思ってたらお家の方が出ていらして、説明してくれました。 好きなだけ見ていってねと言われて、しばし幸せな気分になったの…

月下美人は夢を見るか 2

強烈な香りだった。 しかしそれでいて、けして嫌味ではなく。 例えるならば、夜の闇に浮かぶ白磁の肌を持つ誇り高き女王。 その花は、溢れんばかりの生命力を惜しみなく放ち、目の前で枝を揺らしながら、月に向かって開いてゆく。 「凄いだろ?」 葵はベラン…

月下美人は夢を見るか 1(葵×千歳)

「もう! さっきから堂々巡りじゃない! きちんと打開策を構築出来ないのならこんな会議は時間の無駄です! 叩き台になるような案と、対案をきちんと考えてからもう一度話し合いの場を儲けます、異論はあって!?」 私はバンッと両手で机を叩いて立ち上がる…

色々失敗……

短編に、13日の金曜日だからと葵千歳のちょっぴり涼しい話をアップしてる最中に親父様と喧嘩して最終話が14日になってたり アップするカテゴリ間違えてたり…… 鬱陶しいトラバが付いてたり ものっそ疲れました……。 いま洗濯してます 夜食も作らなきゃなぁ…

Someone is walking over my grave 4

眉を寄せたわぴこはきっぱりと言い切る。 その言葉に慌てたのは葵だけではなく、冷静が売りの秀一ですら取り乱す。 「おいおいわぴこ! お前だって昨夜見ただろ?」 「そうだよ、君もちーちゃんって呼んでたじゃないか!」 わぴこは小さく首を振る。 「ちー…

Someone is walking over my grave 3

翌朝。 葵たちが目を覚ますと、何故か千歳の姿がない。 小さなメモに丁寧な字でひとこと「ありがとう」とだけ記し、早朝に出ていったようだった。 パジャマは綺麗に折り畳まれている。 「何だよ千歳の奴。こんな時間から学校行ったのかぁ?」 朝食のトースト…

Someone is walking over my grave 2

並んで葵の部屋に向かって歩くうちに、先程の恐怖は嘘のように消えてなくなった。 やはり墓場というものは昔から怪談や肝試しなど、良い思い出が無いせいで尚更不気味に感じるのだろうか。 先ほどから葵は他愛のない話を、会話が途切れないように気をつかっ…

Someone is walking over my grave 1(葵×千歳)

梅雨入りしてから数日…… 未だ夏には届かぬ梅雨の中休み、カラリと晴れた涼しい風の吹くある日。 『Someone is walking over my grave』 「なんでこんな事に……」 千歳は、涼風を心地好いと思う余裕もないまま、そこに立っていた。 涼風は今や千歳にとっては寒…

キスをしよう! 58

その夜は、色々と四人で話をしているうちに気が付けばもうじき夜明け……という時間。 「恋バナってやつはすげぇよな」 葵がぐったりと布団に横たわり、呟く。 「女性は元来、お話好きって言うしね……」 隣の布団では北田くんもダウンしている。 「だらしないわ…

キスをしよう! 57

先程とは一転、楽しそうに笑いあう二人の元へコーヒーを運んで、私達も席についた。 二人も私達が気をきかせた事に気付いたのか、はにかみ。 「おめっとさん」 葵のさりげない祝辞に、照れた。 ――― と。 葵が意味深な笑みを浮かべ、北田くんをじっと見つめる…

キスをしよう! 56

「ちーちゃん、おかわりー」 「いいけど太るわよ?」 私と葵で作ったケーキは大好評だった。……わぴこに。 ちなみにクッキーはとうの昔に平らげられた。北田くんまでもが結構な勢いで食べていたから、よほどよく出来ていたのだろう。 ケーキはシフォンケーキ…

キスをしよう! 55

今回は、わぴこが気をきかせて早めに電話をくれたので、前もって準備をすることが出来た。 撮影のスケジュールが立て込んでいることを考慮してくれたのだろう。 結局、北田くんの予定も含めて決まった日程は8月のお盆休みだった。 私は数日前から自宅の掃除…

仔キャラバトン

翡海さんから頂きました、仔キャラバトンです♪ ■ 指定されたキャラが子供設定(要するにショタ、ロリ化)のバトン。以下の質問にお答え下さい。 ■ 質問には本能のままに答えましょう。 ■ お好きなキャラ指定できたら取り敢えずニコニコしておきましょう。 ■ 子…

キスをしよう! 54

慌ただしく、しかし平穏に月日が過ぎて 7月。 いよいよ、撮影も残りが少なくなってきて。 私はひとつ、大きな苦痛を感じるようになった。 「……あ~つ~い~……」 「藤ノ宮さん、あと少しよ! 頑張って!」 「葵! こんな所で寝てる奴があるかっ」 「寝てんじ…

せめて刹那の新婚生活を 3

ルルーの活躍もあって、式は滞りなく済み。 今は披露宴。 満身創痍のサタンもさすがに諦めがついたのか、大人しくルルーに食事を食べさせてもらっている。 ……両腕を釣っているので何も出来ないのだ。 「さば折りかな……」 ポソリ、とラグナスが呟いた。 「腕…

せめて刹那の新婚生活を 2

二人は徐々に賑わい出した式場で、辺りを見回していた。 「いませんわね……」 「絶対、なんかやらかすと思うんだけどなあ」 「よーう、ドラコにウィッチ」 「パノッティ……サタンを見なかった?」 「いや? オイラ笛吹いてたから知らない」 ぴょいぴょいと跳ね…

せめて刹那の新婚生活を

※翡海さんから結婚式バトンを頂きまして、記念に何か書こうかなと思って書いたものです(笑) 『せめて刹那の新婚生活を』 ある日、夜が明けなくなった。 彼が魔導で設えた時計はもう昼を示していたけれど、やはり外は満天の星空を抱く闇が支配したままであっ…

キスをしよう! 53

6月。 雨が続き、いつもなら憂鬱な気分になる頃なのだが、今年の私は違う。 「今日もお疲れさん!」 「葵こそお疲れ様!」 かちん、と冷えたグラスがぶつかって音を立てる。 琥珀色のそれをぐっとあおって、二人同時に大きく息を吐いた。 「っかー!! うめ…