キスをしよう! 58

 その夜は、色々と四人で話をしているうちに気が付けばもうじき夜明け……という時間。



「恋バナってやつはすげぇよな」
葵がぐったりと布団に横たわり、呟く。
「女性は元来、お話好きって言うしね……」
隣の布団では北田くんもダウンしている。


「だらしないわねぇ~」
「ねー。秀ちゃんも葵ちゃんもダメだなぁ」
私とわぴこは枕を抱き込んだまま、クスクス笑う。
恋バナと言うのか、お互いにノロケけているだけで別に難しい話をしてるわけではないんだけどねー。



「お前らよくそんだけマシンガントークが続くよな」
葵はもう顔を上げているのも辛いのか、枕に顔を埋めていた。
時計を見ればもう4時前。
そろそろ外が明るい。


「でも、そろそろ寝なきゃね」
北田くんはかろうじてまだ顔を上げているが、その目はかなり眠そうだ。


「ちーとーせー」
枕に埋まった葵が手をひらひらさせて私を呼ぶ。
「仕方ないわねぇ、もう……」
よっこらしょ、と私は立ち上がり、葵の布団に向かう。
同時にわぴこも北田くんの布団に潜り込もうとして、ちょっとした攻防が繰り広げられていた。
――― もちろん、わぴこの勝ちだったけどね。




北田くんの布団の右側にわぴこ、葵の布団の左側に私。
眠ってしまったであろう彼らを尻目に、私達はまたクスクス。

「ね、ね、ちーちゃん。葵ちゃん、ちーちゃんが一緒に寝てないと起きちゃうの?」
「そうねえ、しばらくは寝てるけど、隣が冷たいとかですぐに起きるわね」
「へえ~! 秀ちゃんはどうなのかなぁ」
「北田くんはなんか静かに寝てそうよねぇ……」
「うん、なんかそんなイメージだよね。ちょっとちーちゃんが羨ましーなー」
「結構不便よ? 寝返りとか打ちにくいし」

小声での、楽しい会話。
幸せのお裾分け……いえ、分け合い、かしら。

「う~ん、秀ちゃんはわぴこがいなくても、ぐーすか寝てるのかなぁ」

わぴこが残念そうに呟いたその時。

「そんな事ないよ、わぴこ。だからそろそろ僕を眠らせてくれないかな」

唐突に、北田くんの声。そしてわぴこが後ろから抱きしめられた。




「 ――― ごちそうさま」

私は、わぴこのこれからを想像して、苦笑しながら瞳を閉じた ――― 。