2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

腕の中の太陽 5

「あっ、ねえシェゾ。もしボクが死んじゃうんなら……カーくんのこと、頼むね」 この期に及んで。 まだ、笑うのか、この娘は。 シェゾの歩んで来た180年以上の人生の中に、こんな女は一人もいなかった。 そしてこの先、永い永い時を生きても、おそらく出会…

腕の中の太陽 4

瞬間、彼は地を蹴っていた。 力一杯、塔の壁を蹴り、アルルの身体に手を伸ばし、引き寄せると胸に抱き込む。 呪文が間に合わなければ、自分もおしまいだ。 だがそれも悪くないな、とシェゾは少しだけうっとりと微笑んだ。 そして地面が目の前に迫ったころ。 …

腕の中の太陽 3

数分後。 シェゾは呆然と立ち尽くしていた。 目を見開き、ただ宙を見つめ。 「……嘘だろ?」 いつも通り……いや、いつもより楽に勝負がつくはずだった。 シェゾは戦う気があまり無かったのだから、アルルが負けるわけは無かったのだ。 それなのに ――― 。 「ア…

腕の中の太陽 2

けれど、そういう時に限って出会ってしまうのは何故だろう。 シェゾが次の戦いに備えて魔導力を回復しようと、魔導酒を飲んだところだった。 「あー! シェゾじゃない! 何してるのさ、こんなとこで?」 ぶぼふ。 最後の一口を飲み込もうとしていたシェゾは…

腕の中の太陽 1

全く、全く、全く!! あのお気楽魔王はロクなことをしやがらねえ!! 独り言、と言うには大きすぎる声で文句を言いながら、サタンのいるであろう塔をひたすら上へと突き進む男が一人。 変態 ――― もとい、闇の魔導士、シェゾ=ウィグィィである。 いつもの事…

ご案内を作ってみた

取り扱いジャンルが増えたので、ご案内を作ってみました。 きんぎょと同じくらい昔から好きだったぷよぷよのシェゾ×アルルを思い余って書いちゃいましたので、サクッと上げちゃおうかなと思います。 魔導物語の方はプレイしてないので、細かい設定がわからな…

ご案内

ここは、陸紅桜が趣味で二次創作を巻き散らしているブログです。 そういった類いに興味のない方は、時間が勿体無いですので回れ右でよろしくお願いします。 只今の取り扱いジャンルは きんぎょ注意報!(葵千歳、秀わぴ) ぷよぷよ(魔導物語)(シェアル) のみで…

夢であいましょう 6

「……葵、その。あまり気を落とさないで……」 「……いいんだ千歳……」 数十分後。 酒場の前で暗さ全開でうなだれる葵と、必死で慰める千歳の姿があった。 酒場へ辿り着き、クエストと呼ばれる冒険者への依頼を斡旋する窓口があることを知り、早速訪れた二人だっ…

夢であいましょう 5 (葵の名字は捏造です、ごめんなさい)

「シングルのお部屋、二室でございますね。では、こちらの宿帳にお名前を」 宿のカウンターで羽ペンを渡され、葵はサラサラとサインをしている。 それを覗き込んで、千歳は驚いた。 『Aoi=Kuonji』 ――― クオンジ? 「葵って……クオンジって言うんだっけ?」 …

夢であいましょう 4

葵は散々、店主が呆れてカウンターを離れるくらい悩み抜いたあげく、ようやく一着の法衣を選んだ。 若草色を基調にした法衣で、足元までをすっぽりと覆う白のフレアスカートが清楚な雰囲気を演出するものだった。白いグローブと帽子もセットになっているらし…

夢であいましょう 3

キリークはのどかな村だった。 農業で生計を立てるものが多いのか、畑が村の大半を占めていた。 村の入り口には『歓迎』の看板が立てられており、旅人には友好的なようだ。 「まずは宿屋かな。酒場で情報集めでもいーけど……ってこの村に酒場あんのか?」 キ…

夢であいましょう2

二人で草原を歩き始めて一時間ほどが過ぎただろうか。 何かが近づいて来るのに気付き、千歳は足を止めた。次いで葵も足を止める。 草原の向こうから、砂煙を上げて近付いて来るのは…… 「馬車、か?」 「そうみたいね……」 その馬車は真っ直ぐに二人の方へと近…

夢であいましょう(葵×千歳、秀わぴ)

風がはしる。 いや、これは私の視点? 千歳は空の上から、広がる緑を眺めていた。 自分の体がそこにある、という実感がわかないところを見ると夢らしい、と冷静に判断して 「綺麗なところ……」 景色を眺めることに専念した。 ビルや道路はなく、まばらに見え…

新規パラレル、葵×千歳(おまけで秀わぴ)始めます

パラレルと言うか、なんというか…… 信頼のおける友人に先に少し読んでもらっていたのですが、好評なようだったので…… こちらは多分ゆっくり更新になるかな? 長編の『キスをしよう!』が完結するまでは思い出したように更新していくと思います(笑) とりあえ…

だから僕たちも、キスをしよう(『キスをしよう!』番外編【秀わぴ】』 )

秀ちゃんってホント鈍い。 頭いいんだから、わかんないかなぁ。 今日はちーちゃんの家でティータイム。 ちーちゃんは葵ちゃんと仲良くしゃべってる。 わぴこは、ソファに秀ちゃんと並んで座って、ちーちゃんが出してくれた映画の台本を一緒に見てる。 やっぱ…

更新履歴

カラオケで色々と発散してきて、テンションが高いまま怒濤の更新を致しました! たぶん誤字脱字はあるだろうなぁ(苦笑) キスをしよう!32から43まで一気に! やっとこさ、ここまで来たか~という感じですね…… 今回の更新でかなり原文に追いついてしまっ…

キスをしよう! 43

何だかんだでゴールデンウィークも半分が終わってしまった。 次の長い休みにもお泊まり会をしようと約束して、今回のお泊まり会は終了。 わぴこ達を送り出し、私は一人でリビングにいた。 間もなく、玄関のチャイムが鳴らされる。 鳴らしたのが誰なのかはわ…

キスをしよう! 42

「葵……葵、起きろ」 ゆさゆさと体を揺すられて、私は目を覚ました。 朝……? 「葵……」 葵を ――― というか、私を抱き込んだままの葵を揺さぶって小声で呼んでいるのは、北田くん。 「寝起き悪いでしょ、こいつ」 「千歳さん……すいません、起こしちゃいましたね…

キスをしよう! 41

答えに手が届いたと思った瞬間だった。 私のベッドがギシッと音を立てて沈み込んだのだ。 思わず悲鳴を上げかけると、『彼』はそれも予想済みだったのか、すかさず手の平で私の口を塞いだ。 「勘弁してくれよ」 小さく耳元で聞こえたのは、葵の声。 闇の中で…

キスをしよう! 40

結局、わぴこも渋々納得して私達はそれぞれの布団で休むことになった。 ひとしきり笑って落ち着いたら急に眠気が襲ってきて……それは皆も同じだったようで。 「それじゃ、おやすみなさい」 「おやすみなさい」 「おやすみーん」 「おやすみー」 口々に告げて…

キスをしよう! 39

「あはは、どうも新田舎ノ中生徒会の女性は鈍感でいけませんね」 北田くんがひときわ明るく言った時だった。 ドアが開き、葵とわぴこが入ってくる。 「全くだな。ホレ秀一、パス」 トン、とわぴこの背を押して北田くんの方へ押しやる。 「教育の成果は?」 …

キスをしよう! 38

ずざざっ、と私は物凄い勢いで後退り。 そのまま部屋の中央まで走り、布団の上にペタンと座り込んでいた。 どっどっどっどっ 今までで一番激しいのではないかと思うほどの動悸に目眩と息切れが…… 「千歳さん?」 不思議そうに歩み寄る北田くんに、ハイッと勢…

キスをしよう! 37

……にしても、徹夜が出来なくなってるってことは……やっぱり年をとってるってことなのかしらねえ…… まあそりゃ、中学生や高校生の頃とは疲れの質も違うし…… 何より、翌日のことを考えると無謀なことをしようという気にならないのよね。 「ねーねー、ちーちゃん…

キスをしよう! 36

「ちーちゃぁぁん!」 ――― お泊まり会当日。 玄関をあけたら、いきなりわぴこが突進してきた。 ぎゅむううう、と力任せに抱きしめられて目を白黒させていると、苦笑しながら続いて入ってきた北田くんが助け船を出してくれた。 「わぴこ、千歳さんは逃げやし…

キスをしよう! 35

その日は夕食を作る暇がなくて、出前を取った。 カレーはまだ出来上がっていなかったし。 夕食を終えてようやく一息つけば、もう23時を過ぎていて。 「やれやれ……なんか大騒動になっちまったなー」 「ホント、思ったより時間がかかっちゃったわねぇ」 食後…

キスをしよう! 34

わぴこの話だと、せっかくのゴールデンウィークなのだから普段会えないぶん、たくさん話をしたいので誰かの家でお泊まり会をしたい……という事らしい。 葵に打診してみると二つ返事でOKされたので、明日、私の家で ――― という事になったのだが。 「んー、近…

キスをしよう! 33

――― 朝。 毎度の事ながら、葵の抱き枕と化したまま彼の腕の中で目覚める。 これにも慣れてしまって、どうせ脱出出来ないのだからと葵が起きるまでもう一眠りするのも当たり前になっていた。 しかし、今日は違う。 ぐっすり眠って ――― 今はもう昼だ ――― 頭も…

キスをしよう! 32

自分自身に対する問答の答えはまだ出せなかったけれど、葵との深いキスが嫌ではなかった、という事実は確かに今、私の中にある。 いきなりで驚いたのは、ファーストキスの時と同じだけど。 「落ち着いたか?」 今、私達はリビングでコーヒーを飲んでいる。 …

キスをしよう! 31

「……泣くなよ」 私は混乱していたのだろうと思う。 出口の見えない思考に悶え苦しみ、そばにある暖かいものにすがることでそれを忘れてしまいたかったのかもしれない。 あるいは、そうすることで答えに手が届くかも……そう、思ったのかもしれない。 とにかく…

キスをしよう! 30

私は、目を見開いた。 いつもの、触れるだけのキスとは違う ――― 葵の舌が、私の唇の輪郭をゆっくりとなぞり、驚きで全く動けない私の口内へと侵入して来る。 葵の舌につつかれ、私は舌を目一杯引いた。 もちろん、そんなものは抵抗の内に入らなくて、遠慮の…