夢であいましょう 6

「……葵、その。あまり気を落とさないで……」
「……いいんだ千歳……」


数十分後。

酒場の前で暗さ全開でうなだれる葵と、必死で慰める千歳の姿があった。



酒場へ辿り着き、クエストと呼ばれる冒険者への依頼を斡旋する窓口があることを知り、早速訪れた二人だったのだが。



「昨日、若い冒険者が受けたクエストが今のところ最後だねえ。あとはあんたらのレベルじゃ無理だよ」
と、一蹴されてしまったのだ。

他に目ぼしい情報もなく、二人は食事だけをとり、重い足取りで酒場を出た。

果たして何を食べたのか、それすらも思い出せない暗黒の食卓であった……。




「ともかく今日は一旦、宿に戻りましょ。明日になったらもう一度クエストがないか聞いてみて、なければ村の周辺のダンジョンを探すのよ」

別にクエストを受けられなくても、冒険は出来るじゃない。
そう言われて葵はようやく顔を上げた。

「……そーだな。あ~あ、何か拍子抜けしちまった……今日はとっとと寝るかぁ」


ようやく少し気分が浮上したのか、諦めたのか。
ともあれ葵は宿へと足早に戻り出す。


(男の子って本当に冒険が好きねえ……)

半ば呆れつつ、千歳も宿へと急いだ。





その夜は、千歳も慣れない戦闘で疲れていたせいか思ったより早く眠気がやって来た。

荷物の中に紛れ込んでいた魔導書を読んでいたのだが、栞を挟むと早々にベッドに潜り込む。


ランプを吹き消し、ベッドに沈んだところで千歳の意識はぷっつりと途切れ ――――――








「……うー」

ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ


「うるさい……何なのよ、もう」


頭もとで鳴る『何か』に手を伸ばし、千歳はハッとして目を覚ました。

「……え?」




見慣れた自室。
鳴っていたのは、目覚まし時計。


「え? ……あ、ああ、そっか、夢……そうよね、夢だったのよね」
寝ぼけたまま千歳は深く息をついた。
「何だか、やけにリアルな夢だったわねえ……ま、面白かったからいいか」


一時の冒険の余韻に浸るように千歳は少し笑い、身支度を整え


「行ってきまーす」


千歳は今日も元気に登校した ――― 。