「気付くのが遅せーよ、ドンカン千歳」
そう言って笑った葵の手が伸びて来て、私の両頬をそっと挟み、引き寄せられて。
ついばむように口付けられた。
どうしよう、こんなに幸せな気持ち、初めて。
ちゅ、ちゅ、と何度も唇をついばまれ、涙がこぼれた。
「葵、葵……幸せ過ぎて怖いの」
「そんなの俺だって同じだ」
私の涙も口唇で掬い取りながら、葵がうっとりと呟く。
ゆっくりと離れ、葵の顔を見れば。
ほんのりと赤い彼の顔。
私はきっと、もっと赤いわね。
「俺はずっと好きだった」
不意に葵が両手を後ろにつき、天井を仰いで溜め息混じりに言った。
じっと目を閉じ、噛み締めるように。
そして、おどけたような苦笑を私に向ける。
「中学の頃からずっとだ。辛かったぜー?」
「え……!」
まさか、あの頃からだなんて。
予想外だった、さすがに。
「まーこんだけ待ったんだ、俺が早まらなかったのも納得だろ? 今更下手なことして、鈍い千歳に決定的に嫌われでもしたら、立ち直れねーよ」
「うっ」
鈍い……わよね。否定は出来ないわ。
「でも、ようやく報われたんだよなぁ?」
……何故かしら。葵の声が、いつぞやの悪戯好きモードに切り替わってるような気がするのだけど。
気付けばすぐそばに葵がいる。そして、後ろからそっと抱きしめられて、髪に顔を埋められて……
「はっきり言うぜ。もう我慢の限界だ、お前が欲しい」
な、な、なんて直球
……と思っていたら、更に追い討ちがかけられた。
「千歳を抱きたい。……駄目か?」
言葉が出ない、覚悟はしていたはずなのに……!!
でも ――― どれほどの我慢だったんだろう。
一つのベッドで何度一緒に眠っただろう。
想像できないけど……きっと身を裂かれるような苦しみなのよね……?
私は、持てる勇気を総動員して。
「……駄目じゃ、ないわ」
それだけ答えた ―――
(46~51までは18禁要素がありますので、ファンのみ公開のカテゴリにアップします。もちろん飛ばしてお読み頂いても全く支障はございません。むしろ飛ばしてお読み頂いたほうが良いかもしれません/笑)※2018.10.8ファンのみ公開から全公開に切り替えました。