キスをしよう! 45

「気付くのが遅せーよ、ドンカン千歳」

そう言って笑った葵の手が伸びて来て、私の両頬をそっと挟み、引き寄せられて。

ついばむように口付けられた。



どうしよう、こんなに幸せな気持ち、初めて。



ちゅ、ちゅ、と何度も唇をついばまれ、涙がこぼれた。

「葵、葵……幸せ過ぎて怖いの」
「そんなの俺だって同じだ」

私の涙も口唇で掬い取りながら、葵がうっとりと呟く。



ゆっくりと離れ、葵の顔を見れば。
ほんのりと赤い彼の顔。
私はきっと、もっと赤いわね。




「俺はずっと好きだった」

不意に葵が両手を後ろにつき、天井を仰いで溜め息混じりに言った。
じっと目を閉じ、噛み締めるように。
そして、おどけたような苦笑を私に向ける。

「中学の頃からずっとだ。辛かったぜー?」
「え……!」

まさか、あの頃からだなんて。
予想外だった、さすがに。


「まーこんだけ待ったんだ、俺が早まらなかったのも納得だろ? 今更下手なことして、鈍い千歳に決定的に嫌われでもしたら、立ち直れねーよ」
「うっ」


鈍い……わよね。否定は出来ないわ。

「でも、ようやく報われたんだよなぁ?」




……何故かしら。葵の声が、いつぞやの悪戯好きモードに切り替わってるような気がするのだけど。


気付けばすぐそばに葵がいる。そして、後ろからそっと抱きしめられて、髪に顔を埋められて……



「はっきり言うぜ。もう我慢の限界だ、お前が欲しい」

な、な、なんて直球



……と思っていたら、更に追い討ちがかけられた。

「千歳を抱きたい。……駄目か?」



言葉が出ない、覚悟はしていたはずなのに……!!




でも ――― どれほどの我慢だったんだろう。


一つのベッドで何度一緒に眠っただろう。

想像できないけど……きっと身を裂かれるような苦しみなのよね……?


私は、持てる勇気を総動員して。




「……駄目じゃ、ないわ」


それだけ答えた ―――










(46~51までは18禁要素がありますので、ファンのみ公開のカテゴリにアップします。もちろん飛ばしてお読み頂いても全く支障はございません。むしろ飛ばしてお読み頂いたほうが良いかもしれません/笑)※2018.10.8ファンのみ公開から全公開に切り替えました。