きんぎょ注意報(お題)

- THE FOOL - 5(完)

「千歳が好きだから、全部が欲しかった。千歳が好きだから、俺は、自分に言い訳をしてまでコイツに関わった」 ――― 力が抜ける。 何てことだ。 自ら、出したくなかった結論を導き出してしまった。 「俺って……」 「馬鹿よ、底抜けに馬鹿」 続きをどうも、と抜…

- THE FOOL - 4

千歳のベッドの脇に椅子を置き、それに腰を下ろして腕を組む。 ブツブツと独り言を吐き出しつつ、千歳の額に乗せた濡れタオルを手に取る。 「あ、もう温いな」 持ってきていた洗面器(勝手にバスルームを覗いて失敬した)に張った氷水にそれをつけ、ぎゅっとき…

- THE FOOL - 3

ミギ、ヒダリ、カイダンアガル、ヒダリ、ココ。 どこの外人かと思うような、見事なカタコト。 不謹慎だとは思っても、ついつい口元が笑みの形に歪んで行くのを止められない。 両手が塞がっているので千歳の手でドアを開けさせ、部屋に入った。 (う~ん、これ…

- THE FOOL - 2

(どう見ても電話してきた時の元気はない、よな) 電話口で口論ができる程には元気だったはずの千歳が今や虫の息と言っていいほどに衰弱しきっている。 葵はのんびり準備などして、不承不承ながら家を出た自分が情けなくなった。 「ほら、頼まれてたモン。牛乳…

- THE FOOL - 1

昨日から春休みに入っているので、今日の葵の予定はバーゲンセールめぐり の、はずだったのだが。 風も少し暖かくなってきた3月下旬。 そろそろ桜も花をつけはじめたこの時期の、実に気持ちの良い散歩道を歩く葵の顔はさながら雨模様だった。 「たく、何だ…