2018-11-27から1日間の記事一覧

(仮)21

「それで、どうだった」 男は木の根に腰掛けて俯き、顔を上げることもせずに問うた。 腰まである長く白い髪がその顔を覆い隠し、表情を窺い知ることは出来ないが、その声は少しの期待を含んでいた。 年の頃は四十には届かないといったところか。 髪と同じ色…

(仮)20

眠りについたのは、確か0時頃だっただろうか。 ふと目が開いたものの、鳥の声もしないし、辺りが明るくないところを見ると、夜はまだ明けていないらしい。 どれくらい眠っていたんだろう ──── 暑い。 じっとりと全身に汗をかいているようだ。 私はとりあえ…

(仮)19

それなりに頑丈なベッドとは言え、2人乗れば少しは軋むもので。 ギシッという音がする度に妙な気恥ずかしさを感じてしまう。 生まれてこの方、家族や親戚以外の男性と同衾するなどという事がなかったのだから当然といえば当然なのだが。 さっきまでの睡魔は…

(仮)18

「玄関先にずっといるわけにもいかねぇだろ。入れよ」 部屋の入口で私を振り返り先輩が言うけれど おずおずと靴を脱ぎ、部屋へと足を踏み入れたものの、やっぱり私はそこで止まる。 だってさっき、ここで先輩と「かけひき」をしたんだ。そして逃げ出した。 …

(仮)17

どれくらいの間、考え込んでいただろう。 私は自分の部屋の前で立ち尽くしていた。 ひやりとした夜の空気に身を震わせて気付いた、パジャマを借りたままだ。 服も置いてきてしまったし。 とは言え、今更忘れ物しちゃいましたと顔を出すのも気まずいし ──── …