キスをしよう! 47

私が顔を背けて言うと葵は少し残念そうに、え~……と不満を述べつつ電気を消してゆく。
ただ、真っ暗にするつもりはないらしく、ベッドサイドのキャビネットに置かれたスタンドライトを灯した。

「いくら何でも真っ暗は無理だかんな」

まあ……ね。
まるきり見えなきゃ、初めて同士では大変だろうし。

「これで我慢してくれよ」
「うん……」

ライトの暖かい明かりに照らされる葵はとても綺麗で。
私がそんな事を思っていたら

「綺麗だぜ、千歳……」

などとうっとり言われて。
返事をする暇もなく、またキスが降って来た。




葵のキスに蕩けていた私の背中に手が回り、下敷きになっていたパジャマをするりと抜き取られる。

「千歳、腰ちょっと浮かせられるか?」
「え……?」

言われるまま腰を浮かせると同時にパジャマのズボンも勢い良く抜き取られ、私は思わず声を上げた。
「み、みみ見ないでよっ」
「大丈夫だって、ちゃんとは見えねーから」
楽しそうに笑って、葵は私のパジャマをベッドから投げ捨てる。
そして自らもパジャマを脱ぎだして。



あまりじっと見つめるのも恥ずかしいので、私は顔を背けて視線をさ迷わせていた。

衣擦れの音がやけに大きく聞こえて、鼓動が早まる。





「あのさ……先に謝っとくけど、俺多分お前が嫌だって言っても途中で止めてやれねぇ……」

私の頬に手を添えて囁かれた言葉すら、かすれた声色で私を酔わせるのだ。

「止めなくていい、から……私、どれだけ葵に我慢させてたか、わかってるから…………その、……して?」

鼓動に合わせるかのように震える声で、それでも確かに言葉を紡げば葵は切なそうな表情を見せ

「馬鹿……そんな可愛いこと言われたら自制効かねーだろうが」
噛み付くように口付けて来た。








今、わかった……

焦るなと言ってくれた日の、葵の切ない表情。
あの時、葵はきっと抑えが効かなくなりそうで、苦しかったんだ。



葵にあんな顔をさせてたのは、私だったのね……。