キスをしよう! 52

――― 眩しい……



いつもの朝……でも今日は休みだからゆっくり休んでいられるのよね……
もう一度このまま眠っちゃおうかしら……



微睡みつつ、私は少し体を動かそうとして、ある事に気付いた。

素肌にシーツの触れる感触。

どうして素肌?
パジャマは……




そこで意識が覚醒する。
ぱっちりと目を開けると、ベッドに肩肘をついて私を抱き込み、顔を見つめている葵の微笑が近くにあった。


やや意地の悪そうな微笑みを浮かべたまま彼は言う。

「おはよ。もう昼だぜ?」
「…………!!!」


思い出した。
そ、そうよ……私、昨夜、葵と……!


「やっぱ、かなりキツかったみたいだな。あの後お前、気を失っちまってそのまま朝だぜ」


そう。
覚えているのは ――― 葵とひとつになったところまで。



「そ、そう……」
何て返していいのかわからず、私は目を反らしてしまう。
葵はさして気にした様子もなく、ベッドの上に体を起こした。

「とりあえず、千歳も目を覚ましたことだし。俺シャワー浴びて来るから」
「ずっとそのままでいたの?」
「ああ、ちょっと寝たから大丈夫だよ。ま、しばらく横んなってな」

言ってベッドから出た葵はそそくさと下着を身に付け、ジーンズをはいている。
私はゆっくりと体を起こしてそんな葵を見ていたが、その背中にあるものを発見してしまった。




赤い『それ』は葵の肩口に点々と散っていて。



あ~……やっぱり爪、立てちゃったのね……



私は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じたが、葵にそれを言う前に彼はさっさと部屋を出てしまって……


「あれ……気付いてないのかしら」



ともかく、服だけは着ておこうとパジャマを拾い上げていたら。




「痛ってぇぇぇーっ!?」

と風呂場から悲鳴が聞こえて来た……。