「なにスカしてんだよ!」
「いいから付き合えよ、なあ」
柄の悪そうな男が4人。
誰かを囲んでいる。
チッ、最近はどうにも低俗なのが増えて困るぜ。
つうか、囲まれてんの千歳じゃねえだろうな……
どっちにしろ、もうじき千歳もこの公園にやってくるのだ。
余計なモンは排除しとくに限るよな。
俺はやれやれとため息をつきながら、男たちに声をかけた。
「よう、よってたかって女の子イジメるなんてお前らでっけぇ小学生だなぁ?」
「ああっ!?」
「なんだテメー!」
「ぶちのめされたいのかよ!」
「イカれた格好しやがって!」
「好きでこんな格好してんじゃねえ。つうかお前ら俺に喧嘩で勝てるつもりでいんのか?」
「カッコつけてんじゃねえよ、ひょろっこいガキが!」
「ガキねえ……お兄さんたち大学生? じゃねえよなーこんな低脳な大学生なんていないか、ははは」
「んだとコラ!」
……え、マジで大学生?
うっわー、なんつう情けない大学生なんだ?
どうせまともに授業なんか受けてないんだろうけど……
呆れて首を振った俺の仕草がカンに触ったのか。
大学生4人は勢い込んで俺に向かってきた。
バッカだよなー。
大学生と高校生っつっても体格そう変わんないんだぜ。
運動神経には自信があるし、見てくれのせいで喧嘩を売られたことも何度もあるから
これでも結構数はこなしてるんだ。
相手が格闘技やってるとかならさすがに多対一だと勝てないかもだけどな
「よっと」
ヒョイヒョイよけながら、俺は目一杯笑ってやる。
「こんの……」
「が……っ」
ほーら自爆。
俺を殴ろうとして、仲間を殴ってやんの。
これで一人撃沈な。
「おいおい仲間割れか~?」
煽ってやればまた真っ直ぐに俺に向かってくる。
テメエよくもとか言ってるけど、俺が殴ったんじゃないし。
「あーめんどくせ……」
チラリと時計を見ると10分近く遊んでいたらしい。
秀一あたりがそろそろやって来るだろうし、カタつけるか……
「ほらよっと!」
一人に回し蹴りを入れて、反動をつけたままもう一人の鳩尾に一発。
くるりと向きを変えて最後の一人の背後に回り、その腕をひねり上げてやる。
途端、ひぃひぃと情けない声を上げる男。
「いてーよ! 離せよ! 腕折れるって!」
「大丈夫大丈夫、折れても数ヶ月でまたくっつくって」
「うわあああやめてくれー!」
「お礼参りとか考えてないんなら解放してやってもいいけど? 今度は折るぜ」
「わかった、わかったよ! もうこんなことしねーから離してくれよ!」
まったく……
俺が手を離すと男は伸びている3人の仲間を起こして、一目散に逃げて行った。
「謝ってから行けよ…………あんた、大丈夫だったか?」
絡まれていた女の子に声をかける。
何故か彼女はうつむいていて、俺の顔を見ようとしない。
「おい? なんかされたのか?」
「だ、大丈夫です……」
ん?
見かけによらずハスキーボイスだな……
「葵、相変わらず見事だね」
俺が女の子の顔を覗きこもうとしたときだった。
俺の後ろから聞きなれた声。
「秀一。見てたのか」
「途中からね」
「わぴこは?」
「ここだよん」
秀一の後ろからわぴこも顔を出す。
「んじゃ後は千歳と由宇か」
「天川くんなら、そこにいるじゃないか」
秀一が不思議そうに俺の後ろに視線をやる。
いつのまに来てたんだ?と俺も振り向くが、そこに由宇の姿はない。
「あの……」
女の子が小さな声で言った。
「ぼく……です」
「は?」
「ぼく、由宇です」
………………そう言って顔を上げた女の子は
由宇によく似た美少女だった。