『ライバルは君だ・7』

 一体どのくらい校門前でぼんやりしていただろう。


「あー……とりあえず商店街行ってみっか」

俺はようやくゆっくりと歩き出した。

考えても答えは見つからないのだ。
だったら商店街でも歩いてみて、なにかヒントを得たほうがまだいい。



いつも行く商店街。
変装といえばまずは服だよなとあちこち見てみるものの、当たり前だが普通の服ばかり。

考えてみれば変装用の服ってなんだ。
ああいうのは通販とかで買うもんなんじゃないか。
俺の手元にあるのは以前使ったことのある探偵団の服だけ。
それも大した代物ではない。


「ダメだ、発想を変えないとこのセンじゃなさそうだ……」

わぴこがそんな無茶なことをさせるとは思えない。
それに考えればわかると言った。

つまり誰もが真っ先に思いつくようなもんじゃないってことだ。






考えるんだ、久遠寺葵。
ジャッジするのは誰だ?

千歳だ。

基準は?

完成度。


違和感があっちゃいけないってことだ、よな
千歳がジャッジするってのもネックかもしれねえ。



過去の記憶を掘り起こしてみる。
それなりにいろんな格好をしてきてるが……










「………………あ」


ふと。
思い当たることがあった。


しかし……
変装、っつうのかな……あれ……

いやまあ装いを変えるという意味では間違いなく変装ではあるけど。
そもそも奇抜な格好をする必要は……ないのか。





よし!
決めた!
というかもうコレしか思い浮かばないし

……なにより、きっと千歳は。


「あの頃よりは、似合う男になってる自覚はあるんだぜ」



ニヤリと笑って俺は自宅への道を歩き出した。






















「17時過ぎ……か。ちょっと早いけど、いいか」


自宅の時計を見つつ、俺はバーゲンのチラシをローテーブルの上に放り投げる。

クローゼットから出して吊るしてあった「それ」に袖を通し、姿見の前で頷いて。

必要になることもあるだろうとサイズを直してもらっておいてよかった。
こればっかりはお袋に感謝だな。



髪も整えて、サングラスを外してポケットに入れる。



「よし、行くかー」



夕日が赤く町を染めていた。
日差しもそう強くなく、過ごしやすい気温だった。



俺はそのまま公園に向かっていたのだが……

「小道具のひとつくらいは欲しいかな……」

急遽思い立って、商店街へと足を踏み入れた。

少し遠回りになるが、時間もつぶせるしちょうどいい。

小道具になりそうなものはないか物色していると店のおばちゃんたちは存分に冷やかしてくれたが。


彼女へのプレゼントかい?なんて
まあおばちゃんたちにとっちゃ、どっちでもいいんだろうけどな。
会話すること自体が楽しいんだろうし。




そして、商店街の出口にほど近い花屋。
俺は無難に「ソレ」を買って時計を見た。

17時40分。

公園は目と鼻の先だ。

少し早いが、まあいい。



ゆるりと公園に足を向けたその時だった…………