翌朝
……いや、翌昼、というべきかもしれないが。
起きたら昼過ぎだった。
春休みの特権である。
千歳がキッチンで朝……いや昼飯の準備をしている間に俺たちは布団を片付けて、交代で洗面所を使った。
「千歳、手伝うぜ」
「あらありがとう葵。じゃあそこのお野菜を皿に盛り付けてくれる?」
「おう」
キッチンでは鼻歌を歌いながらサンドイッチを作る千歳。
こいつは昨日の話を忘れているんではなかろうか。
一瞬そんな風に思ったが……
「昨日は何もなかったわねえ」
唐突にそう言われて、まだ警戒中だということを知った。
「今日が本番かもしれねーなー」
「油断はしないようにしなくちゃね」
「だな……」
そして。
遅い朝食を全員で食べ始める。
この後の予定はまだ決まっていない。
「ねえ、これからどうするの?」
千歳が紅茶を手に誰ともなく尋ねる。
「どこか出かけるのもいいですが、春休みですし混んでるでしょうね……」
秀一が少し考える。
するとわぴこはサンドイッチを頬張りながら
「昨日の続きでいいよ、もうちょっとでクリアできそうだし」
「そうねぇ……無理して人の多いところに行く必要もないかしら」
「まぁな……じゃあ今日もゲーム三昧って事でいっか」
「賛成~」
「まあ妥当ですよね。のんびりしましょうか」
……で。
ちゃっかりゲームはクリアして、裏ステージとやらを出現させたわけだが。
もう外は夕暮れ。
そして俺たち二人の警戒レベルは相変わらずマックス。
つまり。
何も起こっていないのだ。
メシを食ってから何も。
そろそろ俺だって疲れてきたぞ?
もしかしてあれか?
今日の晩に電話がかかってきて、いきなり嘘をつかれたりとかするのか?
お泊り会は何事もなく終わらせて油断したところに……ってことか?
ああもう、わけわかんなくなってきた。
悶々と悩み続ける俺に気づいた風もなく、わぴこも秀一もゲームに興じているわけで。
そして、やはり何事もなく別れの時間がやってきて。
「じゃあ、明後日の会議で」
「ばーいびー!」
実にあっさりと。
あっさりと2人は帰って行った。
呆然と立ち尽くす俺を置いて。
去年と同じく、生徒会会議はある。
明後日の会議でっていうのは嘘じゃない。
……明後日だよ、な?
思わず俺はスケジュール帳を開いて確認する。
間違いなく明後日だ。
じゃあやっぱあれか?
今夜電話で「実は僕、不治の病にかかっているんだ……」とか……
きっとそうだ!間違いない!
もうそれしかない!
そうであってくれ!!
俺はもう疲れたんだよーっ!!!!