エイプリルフールSS ’10(4)

翌朝

……いや、翌昼、というべきかもしれないが。




起きたら昼過ぎだった。
春休みの特権である。


千歳がキッチンで朝……いや昼飯の準備をしている間に俺たちは布団を片付けて、交代で洗面所を使った。


「千歳、手伝うぜ」
「あらありがとう葵。じゃあそこのお野菜を皿に盛り付けてくれる?」
「おう」


キッチンでは鼻歌を歌いながらサンドイッチを作る千歳。
こいつは昨日の話を忘れているんではなかろうか。

一瞬そんな風に思ったが……


「昨日は何もなかったわねえ」

唐突にそう言われて、まだ警戒中だということを知った。


「今日が本番かもしれねーなー」
「油断はしないようにしなくちゃね」
「だな……」







そして。
遅い朝食を全員で食べ始める。
この後の予定はまだ決まっていない。


「ねえ、これからどうするの?」

千歳が紅茶を手に誰ともなく尋ねる。

「どこか出かけるのもいいですが、春休みですし混んでるでしょうね……」

秀一が少し考える。
するとわぴこはサンドイッチを頬張りながら

「昨日の続きでいいよ、もうちょっとでクリアできそうだし」

「そうねぇ……無理して人の多いところに行く必要もないかしら」

「まぁな……じゃあ今日もゲーム三昧って事でいっか」

「賛成~」

「まあ妥当ですよね。のんびりしましょうか」







……で。

ちゃっかりゲームはクリアして、裏ステージとやらを出現させたわけだが。

もう外は夕暮れ。

そして俺たち二人の警戒レベルは相変わらずマックス。






つまり。
何も起こっていないのだ。
メシを食ってから何も。


そろそろ俺だって疲れてきたぞ?
もしかしてあれか?
今日の晩に電話がかかってきて、いきなり嘘をつかれたりとかするのか?

お泊り会は何事もなく終わらせて油断したところに……ってことか?


ああもう、わけわかんなくなってきた。



悶々と悩み続ける俺に気づいた風もなく、わぴこも秀一もゲームに興じているわけで。




そして、やはり何事もなく別れの時間がやってきて。



「じゃあ、明後日の会議で」
「ばーいびー!」



実にあっさりと。

あっさりと2人は帰って行った。
呆然と立ち尽くす俺を置いて。



去年と同じく、生徒会会議はある。
明後日の会議でっていうのは嘘じゃない。

……明後日だよ、な?

思わず俺はスケジュール帳を開いて確認する。
間違いなく明後日だ。




じゃあやっぱあれか?
今夜電話で「実は僕、不治の病にかかっているんだ……」とか……

きっとそうだ!間違いない!
もうそれしかない!
そうであってくれ!!


俺はもう疲れたんだよーっ!!!!