だが拍子抜けもいいところだった。
相変わらず二人ともゲームに夢中だし、これといってアクションがあるわけでもない。
いやいや、きっとこうやって油断させておいて罠にハメる気なんだ、気をつけろ俺。
「はい葵、ちょっと交代」
「おー……っておいボス戦で交代かよ!」
「あはは、こういうのは葵のほうが得意だろ?」
「くっそー……」
「ほら行くよ葵ちゃん!」
「へいへい」
俺はコントローラを受け取りながら千歳を見る。
千歳も不思議そうな顔をしているが、今のところ何もなし。目がそう語っていた。
……………………そして。
時計はすでに午前3時を指していた。
「さすがに眠いね……そろそろ休もうか」
「うん……わぴこもちょっと眠いー」
「ああ、うん……そうね、そろそろ寝ましょうか」
千歳が片付けを始める。
「葵、寝室の方お願い」
「ああ」
一足先に俺たちは寝室に向かい、わぴこと秀一の分の布団を敷く。
たまにこうしてお泊り会なぞを開くので、千歳が購入した二人の布団はちゃんと常備されているのだ。
「んじゃ引っ張るぞ」
「いいよ、それっ」
俺と秀一がシーツをかけている間にわぴこは枕カバーをつける。
こんな時こそ何か……きっと嘘が。
そう思って俺はまだ警戒をといてはいない。
だが。
「ふう、これでよし。じゃあ僕もパジャマに着替えてくるよ」
「へ? あ、ああ」
秀一は何事もなかったかのように部屋を出る。
わぴこも布団にダイブしてフカフカな感触を楽しんでいて、特におかしなところはない。
「お待たせ……ってあら、北田くんは?」
「着替えにいったよ~。わぴこ真ん中で寝る!」
「あら、そうなの……じゃあ先にお布団入っちゃっていいわよ、眠いでしょ」
「うん、おやすみちーちゃん、葵ちゃん」
「おやすみわぴこ」
「おやすみ……」
………………。
俺と千歳は顔を見合わせる。
やはりわぴこではなく、嘘をつこうとしているのは秀一か?
「お待たせ……あれ、わぴこもう寝ちゃったのかい」
部屋に戻った秀一を見ても普段となんら変わらない。
「眠かったんだね」
わぴこの肩まで布団を引き上げてやりながら秀一が笑って
「それじゃ、僕らも寝ましょうか」
いそいそと布団に入る。
「ええ……そうね。それじゃ、おやすみなさい」
千歳も納得は行かないようだが自分のベッドに入って。
俺も仕方なく布団に入った。
起きてから本気を出してくるかもしれない。
とりあえず今は何も考えずに眠れそうだ……。