エイプリルフールSS ’10(3)

だが拍子抜けもいいところだった。
相変わらず二人ともゲームに夢中だし、これといってアクションがあるわけでもない。


いやいや、きっとこうやって油断させておいて罠にハメる気なんだ、気をつけろ俺。



「はい葵、ちょっと交代」
「おー……っておいボス戦で交代かよ!」
「あはは、こういうのは葵のほうが得意だろ?」
「くっそー……」
「ほら行くよ葵ちゃん!」
「へいへい」



俺はコントローラを受け取りながら千歳を見る。
千歳も不思議そうな顔をしているが、今のところ何もなし。目がそう語っていた。




……………………そして。

時計はすでに午前3時を指していた。




「さすがに眠いね……そろそろ休もうか」
「うん……わぴこもちょっと眠いー」
「ああ、うん……そうね、そろそろ寝ましょうか」

千歳が片付けを始める。

「葵、寝室の方お願い」
「ああ」


一足先に俺たちは寝室に向かい、わぴこと秀一の分の布団を敷く。
たまにこうしてお泊り会なぞを開くので、千歳が購入した二人の布団はちゃんと常備されているのだ。

「んじゃ引っ張るぞ」
「いいよ、それっ」

俺と秀一がシーツをかけている間にわぴこは枕カバーをつける。
こんな時こそ何か……きっと嘘が。

そう思って俺はまだ警戒をといてはいない。


だが。


「ふう、これでよし。じゃあ僕もパジャマに着替えてくるよ」
「へ? あ、ああ」

秀一は何事もなかったかのように部屋を出る。
わぴこも布団にダイブしてフカフカな感触を楽しんでいて、特におかしなところはない。




「お待たせ……ってあら、北田くんは?」
「着替えにいったよ~。わぴこ真ん中で寝る!」
「あら、そうなの……じゃあ先にお布団入っちゃっていいわよ、眠いでしょ」
「うん、おやすみちーちゃん、葵ちゃん」
「おやすみわぴこ」
「おやすみ……」






………………。






俺と千歳は顔を見合わせる。
やはりわぴこではなく、嘘をつこうとしているのは秀一か?

「お待たせ……あれ、わぴこもう寝ちゃったのかい」

部屋に戻った秀一を見ても普段となんら変わらない。


「眠かったんだね」
わぴこの肩まで布団を引き上げてやりながら秀一が笑って
「それじゃ、僕らも寝ましょうか」

いそいそと布団に入る。

「ええ……そうね。それじゃ、おやすみなさい」
千歳も納得は行かないようだが自分のベッドに入って。
俺も仕方なく布団に入った。


起きてから本気を出してくるかもしれない。
とりあえず今は何も考えずに眠れそうだ……。