2日後の生徒会室。
そこには俺と千歳の疲れきった表情があった。
結局、4月1日の間に何かがあったわけでもなく、かといって昨日も連絡すら来ない。
悩むだけ悩み抜いて俺たちは疲れていた。
「……では、行事についての確認はこれで終了ですね。生徒会長、ほかに何かありますか」
「いいえ……何もないわ。会議はこれで終了ね。お茶でも入れましょう」
「わぴこ、チョコレート食べたいなっ」
「お前何で棚の中にチョコが入ってるの知ってんだよ」
「え」
「……覗いたな?」
「はいはい、わかったから移動しましょ!」
いつも通り、なんだ。
こ・れ・で・も・かってくらい、いつも通りなんだ。
「お待たせ」
千歳がいれた紅茶をすすりながら、俺は迷っていた。
エイプリルフールが過ぎてなお、こんなに悶々とするくらいなら……
いっそ聞いてしまったほうがマシなのではなかろうか。
そう思い始めていた時だった。
「そういえば、あれから1年になるんだね……なつかしいよ」
「へ?」
秀一がにっこりと微笑む。
「ほら、僕が葵たちの交際を知らされたじゃないか」
去年の、エイプリルフール……。
「そ、そーだな……あの時の秀は結構怖かったぞ?」
「だろうね、仕返しする気満々だったし」
秀一は小さく笑った。
「で、葵。千歳さん。……エイプリルフールは楽しんで貰えましたか?」
……………………………………思考が再起動するまでに随分と時間がかかった。
それは千歳も同じようで、紅茶を手にした格好のまま固まっている。
エイプリルフールは楽しんで貰えましたか、だって?
「とても愉快だったよ、ねえわぴこ」
「うん」
にま。
2人が口の端を上げて笑う。
「今か今かと警戒している2人を眺めているのは楽しかったですよ?」
「ふたりとも目が泳いでたもんねー!」
ちょっと待て?
どういう事だ?
誰か俺に説明してくれ?
「わからないかな? 僕は葵にちゃんと嘘をついたよ?」
「わぴこはちーちゃんを騙したよ?」
「……はぁっ!?」
「……………………あああああっ!!!」
千歳がようやく動き出すと同時に大声で叫んだ。
「わ、わぴこ……!!! 秀ちゃんが嘘つくよ、っていうのがあんたの嘘だったのねぇぇぇ!?」
……!!!
つ、つま……り……
俺が秀一に視線を向けると。
今まで見たこともないくらい、なんというか……黒い?
ああ、黒い笑顔で。
秀一は俺を見ていた。
「ふふ、これで復讐は完了したよ。去年の借り、確かに返したからね……あ・お・い?」
や、やられた……完全に術中にハマってたんだ俺たち……
わぴこが「今年は自分も騙したい」と言ってたから気をつけろ。
それこそが秀一の大嘘。
俺は裏読みしすぎて、結局警戒しっぱなしで今日まで………………
ち、ちくしょー!!
「お前らグルだったんだなー!」
「去年は君と千歳さんがグルだったんだから対等だろ?」
「くっそー! 覚えてろよっ!! 来年は絶対騙してやるからな!!!」
隣で力尽きた千歳のことは見なかったことにして
俺は絶叫したのだった……。