きんぎょ注意報 (葵×千歳) Wake up,Sleeping beauty 1

「葵!! 待ちなさーい!!」

今日ものどかな田舎ノ中。いつも通りの風景がそこにあった。
「毎日毎日、葵も飽きないね」
呆れたように言いつつも、その顔には楽しそうな笑みを浮かべる秀一に。
「ちーちゃんと葵ちゃんて本当になかよしだねっ!」
同じく楽しそうなわぴこ。

(しかし。しかし、だ。お前ら、その笑顔がもうじき崩れることになるんだぜ)

追いすがる千歳から余裕の表情で逃げながら、葵はほくそ笑んでいた。
たまには千歳の奴に一泡ふかせてやろうと思って考えた作戦。
この追いかけっこは「いつもの風景」であると同時に、作戦の第一段階であったのだ。

(よし! ここだっ!!)
葵の目の前には階段。
この場所こそが作戦の決行場所。

――― の、はずだった。




『Wake up,Sleeping beauty』




「葵!! 葵っ!!」
 千歳の泣きそうな声で葵はフッと我に返る。
「葵ちゃん! 秀ちゃん、葵ちゃんが階段から落ちて動かないよっ」
わぴこの声もすぐ側で聞こえてはいる。
だが葵は目をあけていられなかった。
「下手に動かすと危険です、まず病院へ……」
落ち着いた様子で二人を諭す秀一の声が遠ざかってゆく。

(やべー。受け身を取ったつもりが……脳しんとうを起こしちまったらしいな。まぁ、作戦の演出としちゃあ……上出来……だけ……)

ぷつん。
葵の意識は、そこまで考えて途切れた。